医療学会の開催

聖マリアンナ医科大学臨床検査医学・遺伝解析学教授 右田 王介

医療学会の開催

「学会」と聞いてみなさんはどんなことを思い浮かべますか?

『象牙の塔』という言葉でしょうか?もしかしたら、ホテルやコンベンションセンターにスーツを来た人たちが集まったりするちょっと怪しげ(?!)な光景を見かけて頂いたり、スポーツイベントやアイドルコンサートと大規模な学会の開催が重なって宿泊施設が足りなくなっているというようなニュースをみたりしたことがあるかも知れません。ちょっと脱線しますが、もともと『象牙の塔』とはよい意味の言葉であったと聞きます。ただ、現在は芸術や研究を難解な探究するような場や人々を、浮世離れしている、あるいは現実逃避的だ、などと揶揄する意味で使われて、あまりいいイメージの語ではないですよね。

医療関係の「学会」は、医療にかかわる専門家が新たな知見を共有し最新の医療情報を学ぶことを目的とした組織そのものや、その組織が開催する集会を指しています。数十人くらいの規模の小さなものは研究会などと称していることもあります。集会としての「学会」(以降では「学会」はこちらの意味で使います)は、経験や研究成果を発表して聴講するというだけでなく、他の専門家と意見を交わす場であることが重要です。参加は会員限定という学会もありますが、多くの学会では市民向けのイベントもあり、興味のある誰にでも医療の進歩を伝える役割も果たしています。実際に参加してみると、『象牙の塔』というよりも、参加者の交流のための開かれたイベントだと感じられるはずです。

学会の運営は、担当する主催者と開催地が固定されているものもありますが、研究者が各回を持ち回りで運営を担当するものが多いです。例えば温泉療養を研究フィールドとする学会では全国の温泉地を巡って開催されているものもあります。多くの人が集まる集会であるので、学会は必ずしも発表と聴講の場というだけではなく、地元業者による物産販売などがあったり開催地の観光企画が学会日程のなかに組み込まれていたりする場合もあります。
(もちろんそうした企画はオプションとして参加者が実費を払います。)一方でコロナ禍をへてハイブリッド開催といって開催地に出向かずオンラインで参加できることも増えました。たしかに学習の機会としてはオンラインでも十分かもしれません。でも、学会の目的に交流にあると思うと、開催地に行って対面で話すことにも学会の意義があると思っています。

学会の準備に関わってみると、大変な作業のひとつはプログラムの編成だと感じます。現地参加者が数千人規模の学会であると、開催する何年も前から準備を始めます。発表の多くは各研究者からの応募によりますが、さらに参加者が興味を持つ最新の話題について講演やシンポジウムを企画します。そうした講演の研究者と発表内容が、その後、世間の大きな話題になったりもします。研究動向をどう見せ、誰に話してもらって、何に注目してもらうか、これは運営側の大切な使命になり、それはその会全体のイメージを決めます。先日運営に関わった学会のひとつではこうした講演のひとつに、お世話になった海外の研究者をお呼びする企画を立てました。内容もさることながら、年月を経て恩師をご紹介する栄誉なことで、あり難いチャンスなのですが・・・。英会話のハードルに恐れ慄きました。言語の壁というだけでなく、久しぶりにあう恩師となると会話が続かないことがありますよね。研究や、学会発表について意見交換が正道とは思うものの、ちょっとした合間での会話のため、話題を準備することにコッソリと(でも実はかなり時間を)費やしたような気がします。

こうした準備に加えて学会運営当日は、参加登録、設営などたくさんの業務があります。一連の流れを効率的に管理するノウハウを持ち、専門的に運営を請け負う企業も存在しています。学会の成功には、こうした裏方の努力が欠かせません。参加者がより良い環境で発表と議論が行えるよう、その運営には様々な工夫が重ねられています。学会は最新の話題、そして参加者の交流の場です。もし、お近くで興味のある学会があれば、ちょっとお出掛けしてみてはどうでしょうか?