あかちゃんの病気をどう発見するか?

聖マリアンナ医科大学 臨床検査医学・遺伝解析学 教授 右田 王介

自己紹介

希少疾患や難病に、よりよい医療をどう提供するか、臨床検査と小児科の立場から考えています。

講演内容

講演内容

新生児スクリーニングという言葉を聞いたことがありますか?
この場合の『スクリーニング』とは、発症していない、あるいは疾患のあることに気がついていない集団のなかで、疾患の可能性のある人を拾い上げ適切な診療につなげる試みを指しています。健康そうにみえるものの、実際には疾病にかかっている可能性のある人をみつけることといえます。たとえば、学校や職場の健診などで行う多くの検査は、まだ診断をうけていない疾患を拾い上げるために行っていることですから、スクリーニングの検査を行っているといえるでしょう。

赤ちゃんたちの病気については、どうでしょうか?私たちは、産まれてきた時に5%程度の確率でなんらかの疾患の診断がつけられると言われています。もちろん、慎重な経過観察を行い、その後に治療が必要のない疾患もあります。
出生時にはとくに症状がなく、時間の経過とともに症状があらわれる疾患があります。
そうした疾患の中に、疾患を早く見つけて(早期診断)、早く対応することで(早期治早期介入)将来の問題を減らすことができる疾患もあります。しかし、新生児(生後28日までのあかちゃん)を対象に症状がほとんどないものを拾い上げるのですから、こうした疾患を見つけるのは難しいものになります。そこで、出生時点にあきらかな症状がわからない体質や疾患をはやく拾い上げ、診断に結びつける取り組みを新生児スクリーニングと呼びます。

日本の新生児スクリーニングでは、『新生児マススクリーニング』という取り組みが有名です。1977年から全国での事業として行われており、都道府県(あるいは政令指定都市)がおこなうべき責務として定められ、検査費用は公費負担として患者さんの負担のない検査が実施されています。さらに全国一律の取り組みというわけではないのですが、聴覚スクリーニングなど様々な試みも開始されています。最近では、地域や医療機関ごとに、家族の負担による検査による『拡大新生児スクリーニング』も取り組まれています。
ライソゾーム病という、生後の早い時期に診断をすることで、早期の治療が可能な疾患についてその新生児スクリーニングの現状を例に、現在の動向をお知らせしたいと思います。

新生児スクリーニングの検査は、その診断をせず、自然のままに経過をみていくと、その後重篤な症状があらわれる可能性がある疾患を対象にしていますから、こうした検査の情報が不十分であったり、家族の負担の問題や生まれた地域によって受けられる検査の内容が異なっていて検査を受けられないことがあったりするのは検査の目的から考えると問題です。新生児スクリーニングは公平に、またひろく新生児に検査を提供できることが必要です。現在行われている検査手法と、実施がひろがるために必要な問題点についてお話しします。

拡大新生児スクリーニングの現状と、その問題点を取り上げながら、今後の新生児スクリーニングに向けた課題を紹介します。拡大新生児スクリーニングの最大の課題は、この問題に多くのひとが関心を寄せることと考えています。早期発見の必要な疾患とその意義について、考える一助となることを願っております。